サイスコFSSパロの落書きです。
 騎士サイファーとファティマスコール。ナチュラルにお付き合いしてます。ふたりともエゴイスティックで暗いです。苦手な方はそっとbackしてくださいね。




残酷

 朝の支度が出来なくなるからもうやめてくれ、と懇願してくるのを、んなもん、俺がするから好きにさせろと一蹴した翌朝。俺はシャワーを浴びてから、朝食の準備をして、寝室を覗いてスコールが眠っているのを確認すると、先に食事を取った。着替えを済ませ、もう一度ベッドルームに入ると、上掛けがもぞもぞと動いている。
「…起きたのか?」
「…朝食は?」
 まだ間に合うなら作ってくれるつもりなのだろう、無理に起き上がろうとするのを手で制して答えた。
「済ませた。お前の分、テーブルの上」
「…俺の分なんか、いいのに」
 あきらかに落胆した様子で、スコールは再びベッドに潜り込んだ。
「いいわけねーだろ。俺のせいで起きれなかったんだし」
 ゆうべ、すげー可愛かった。かがみこんで耳元で囁き、頬にキスすると、ふいと横を向かれてしまう。
「どうした?」
「こういうの、困る。…主人の身の回りのことは、俺がするのが普通だろ」
「ああ?」
「あんた、俺がファティマだって忘れてるんじゃないのか」
 こんなふうに甘やかされるのって、かえって残酷だ、とスコールはかすれた声で呟く。
 俺はゆっくり手を伸ばして、焦げ茶色の髪を梳くように撫でた。
「忘れてねーよ。お前は俺のものだ」
「…」
「俺のものをどう扱おうが、俺の自由だ。そうだろ?」
 黙っているスコールに、返事は?と促すと、ようやく、ハイ、と小さく答えた。睫毛を伏せて、シーツの皺を見つめているその横顔は、どこかまだ不服そうだ。
「夕方には戻る。良い子にしてろよ」
「……ハイ。」
 今度は、少しむっとしたような声音。その子どもっぽい態度に俺が笑うと、スコールはますます怒って上掛けに潜ってしまう。その頭を布地のうえから軽くはたいて、行って来る、と声を掛け、俺はベッドルームの扉を閉めた。

 そのまま出かけようとして、しかし俺は振り返り、自分の閉めた寝室のドアを見つめる。この扉の向こうの寝台に横たわったスコールは多分、そろそろと上掛けから顔を出し、またいつものように思い悩んでいる。
 人工生命体であるスコールの寿命は、俺よりも遥かに長い。おそらく本人の危惧する通りに、俺はスコールを残して死ぬのだろう。本当に優しい主人なら、きちんとファティマの立場を踏まえて接するのかもしれない。
 いずれ人形に戻る日が来るのなら、はじめから人形でいるほうが楽だ。そう考えて、スコールは俺の扱い方を非難する。けれど、今はまだ、こうして俺はここに居て、お前を愛しているのに、お前は、俺が居なくなった後のことばかり考えている。

 残酷なのは、お前のほうだ。



 2012.6.20 / 残酷 / END

 サイスコはFSSパロ似合うと思うんですよね…!MHハイペリオンに騎士サイファーとファティマ・スコールが載る絵面が、もう自然と浮かんでくるじゃないですか。ああ、どなたか書いてくれないかな~。
 これを書いた当時のMEMOに「スコールはポッドに入ったらすぐにサイファーのこと忘れそう」って書いてて、酷くてちょっと笑いました。でもサイファーのほうは約束を守ろうとする男ですから、ちゃんとお披露目パーティに迎えに来てくれるよね!(妄想です)問題はファティマ・スコールが衆目にさらされた状態で素直にサイファーを「マスター」と呼べるかなんですけど…うちのふたりはいつもそこでつまづきます…我に返ったら負けだよ、頑張って!!